トルコの獄中からBanksyの元に届いた「違法な手紙」が泣ける、、、



 2018年3月、ニューヨークの有名な壁、Houston Bowery WallにBanksyの作品が誕生しました!(過去記事はこちら)グラフィティ・ライターのBorfと共同で完成させたこのミューラル。一見しただけでは、そのメッセージの理解が難しいこの作品。しかし、このミューラルの裏側には、壮絶な物語が存在していました。

 ミューラルの中に描かれているこの女性は、トルコに住むクルド人ジャーナリストで、アーティストでもあるZehra Dogan。彼女は、トルコ国内のメディアが報じようとしない、クルド人街ヌサイビン地区の実情を発信してきました。2016年のある日、彼女は破壊されたヌサイビン地区の瓦礫の中にトルコ国旗がはためく水彩画を描き、Instagramに投稿しました。

Photo by @Zehra Dogan

 その後、この画像がテロ組織のプロパガンダ行為に当たるとして、トルコ政府により拘束され、有罪判決を受けてしまいました。その懲役期間は、2017年の9月より2年9ヶ月22日。

そんな獄中の彼女からこの度、Banksy宛に「違法な手紙」が届いたそうです。
Banksyが公開した、その手紙がこちら↓


 Photos by @Banksy

Dear Banksy
 
 今、私は多くの事を禁止し拒絶した国の中に存在する、血塗られた拷問の歴史を持つ地下牢でこの「違法な手紙」を書いています。手紙や電話での通信手段を禁止されている私にとってこの手紙は違法です。ですので、私は秘密裏にこの手紙を書き、極秘の手段でこの手紙をあなたに送るつもりでいます。

 まず始めに、この地の現状の話をしたいと思います。美しい土地、山、そして街を爆撃するべく飛び立つ多くの戦闘機の恐ろしい爆音によって、私達は毎日怒りに震えています。1時間に1回は聞こえるそのおぞましい音によって、私達の身近な家族、親戚、そして動物までもが殺されています。

 毎日のように新聞で知る、身近な人々の死!その記事を読んだ時のこの苦しい気持ちは本当に説明が難しいです。それはある日の事、私達は刑務所の中で友達の娘がアフリーン(シリア北西部の都市)で殺された事を知りました。更にその日に、刑務所の中で一人の受刑者が自分の靴紐で首を吊って自殺を図りました。多くの「死」がこんなにも身近に存在する日々の中で、私達は「生」というものに執着して行く事が本当に困難な時があります。そんな日々の中で私達は、こんな会話をしています。「誰も正しい部分は見てくれない。私達は、大量虐殺の名の下、いつか命を奪われるだろう。もし仮に誰かが私達を見てくれたとしても、きっと何も出来ない。そこにはきっと虚無があるだけ。私達は、架空の世界のウソの中で生きているだけ、、、」

 それから少し時が経ったある日、刑務所の友達がヌサイビン刑務所と私の顔が描かれたあなた達のアート作品を新聞で発見しました。当時、悲壮感に包まれていた私と友達に、あなたの作品は言葉では言い表せない程の幸福感を運んでくれました。私が投獄されている事に抗議してくれている、その壁画、そして遠くの地から送られたあなた達の気持ち。それは私の水彩画を黙認出来ない程に歪んでしまったこの地の体制に対する最高の返答だと私達は感じました。

 この国は、国の抑圧に果敢に立ち上がった人々を徹底的に追い詰めてきました。その反面、この国は自分達がした愚行を面と向かって見せられる事を最も恐れています。あなた達のサポートのお陰で、この地の残虐性を表現した私の水彩画の目的は達成出来ました。当時、政府が私を訴えた時は本当に驚きました。「私の水彩画が人々を反政府的な活動に導く為に描かれた?そんなはずはないのに、、、」でも今は、心からこう思います。「この水彩画が私を刑務所に導いた事。それも悪くない。なぜならヌサイビンの現状、現実を多くの人に知らしめることが出来たから!」

 今、多くの人が私の声に耳を傾けてくれます。この地で生き、私と同じ言語で話す権力者達は私の言葉には耳も傾けない。でも遠くの地で生き、私とは違う言語で話す人々が私の声に耳を傾けてくれる。アートは、言葉をはるかに超える力を持つ最高のコミュニュケーション手段ですね!

 Borf(グラフィティ・ライター)にも心から感謝しています。ニューヨークのような大きな街に私の水彩画がプロジェクターで投影されたなんて今でも想像出来ません。毎日12時間もの間、その事を想像しているけど、それでもやっぱりこれは想像をはるかに超えた出来事です。今、私は前より強く生きています。そして今、私はアーフリンの街の絵を描いています。

 きっとその絵にも意味があるから、、、

Zehra Dogan


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