LIFE IS BEAUTIFUL コラム by 野田翔太(セレクトショップ・PUBLICATION)


Street Art News Japanの特別企画として、福岡市中央区にあるセレクトショップPUBLICATIONのオーナーである野田翔太氏によるコラムをお届けします!
野田氏は、アートバイヤーとしても有名で、特にMr. Brainwashの作品を日本でいち早く紹介した人物として知られています。
2010年、Banksyによるドキュメンタリー映画『Exit Through The Gift Shop』が公開され、Mr. Brainwashに関して様々な噂がネット上を駆け巡りました。
今回のコラムは、ネット上で話題となった『Mr. Brainwashとは何者か?』といったことに重きを置いたものではなく、もっと大切なMr. Brainwash並びに彼の作品を通じて、野田氏が感じてきたアートの持つ魅力や素晴らしさを語ったコラムです。
Thierry Guettaの素顔を日本で最も知るアートバイヤー、野田氏による渾身のコラムを是非お読みください。


LIFE IS BEAUTIFUL
 
私とMr. Brainwashの出会いは突然でした。
2004、5年頃から洋服のバイヤーとし年に数回アメリカに渡っています。
その傍らアメリカのありとあらゆる壁にアートが描かれている文化に衝撃を受け、
アートに興味がわいてきていました。

2008年頃からアンディーウォーホールのようなPOPな色使いの面白いアートがLAの壁を埋めていきます。
それがMr. Brainwash。
もちろんその時は誰が描いたなんてわからず・・・。

あるとき手にした雑誌LA WEEKRYの表紙を飾っていたキャンベルスプレー。
間違いなく僕がLAの街で気になっていたあのPOP ARTと同じアーティストだと気づき、
衝撃をうけ彼のアートをどうにか入手したいと思いましたが、
もちろん日本では彼の情報などほとんどなく、もちろん入手できず・・・。

それなら直接会って売ってもらおうと彼のアトリエの場所を調べLAに渡った際に、
そのアトリエを勢いで訪ねることにしました。

ドアをノックすると出てきたのはその時のスタッフ“クレメンス”。
彼女にアートを売ってほしい、彼の絵が好きなんだと伝えるも答えはNO。
ここはアトリエで絵を売っているところでは無いと。


しかしその頃にはMr. Braiwashと言う男、そして彼のアートに対する自分の興味は高まりすぎていて、
あっさりと黙って帰るわけにはいかず、
どうしても好きだから売ってほしい、わざわざ日本から来たんだと一生懸命伝えると彼女は、
5分待ちなさいと言いドアの奥へと消えていきました。

そして5分、6分、7分と待てど彼女は戻ってこず、諦めかけていたとき、
ドアの向こうから現れたのはなんとMr. Brainwash本人。

まさかの急な対面に思わず抱き着いてしまいました。
まさかこんなにあっさり本人に会えるとは思っていなかったので少し我を忘れましたが、
MBW(Mr. Brainwashの略語)の方はそうでもない。
最初はものすごく警戒されました。
Mr. Brainwashにしてみれば、
日本からいきなり訪ねてくるなんて思いもよらなかったことでしょう。

そこからは彼の質問攻め。
なんで日本人が俺の事をしっているんだ?
どうやってここを調べてきたんだ?
丁寧に僕は答え、確かにあなたはまだ日本では有名では無いが、僕は仕事でLAによく来ていて
あなたの絵に興味を持ったというと条件付きでアトリエに入る事を許してくれました。
条件として、アトリエ内の写真は撮るな、作品にも触るなと言われ、テーブルに何種類かのポスターを並べられ、
ここに並べた絵のなかから欲しいものだけを買いなさいと。

明らかに信頼されていなかった僕は彼の信頼と、彼に対する情熱を伝えたく
並べられたポスターをすべて購入すると彼に言うと彼は驚いた様子で
お前は本当にアート大好きなんだぁと心を開いてくれました。


その後たくさんの話しをしました。
彼は日本のアート事情などに興味があるようすでさまざまな事を彼に話し、
いつしか帰る頃には写真も撮らせてくれ
またLAに来るときは連絡しろよ!とメールアドレスと電話番号を交換。
それ以来彼とは年に数回LAにいく度に彼のアトリエを訪ね、彼とお会いしています。

これが彼との出会い。

彼と出会いさまざまなアートの話しを聞かせてもらい、ますますアートにはまっていった僕、
もちろん彼の作品もたくさん見させてもらい所有もしています。

アートには賛否両論、もちろん誰もがそれぞれ好きなアーティストや作品があると思いますが、
彼と出会い、彼に魅了され、彼のアートが益々好きに僕はなっていきました。

映画の公開等で日本でも知名度が上がり、
彼はどんな人?とよく聞かれるのですが、
彼はほんとにただの『もともと映像が趣味だった古着屋さんで、今はアーティスト』です。
でもそれが彼の魅力で彼の作品の魅力だと僕は思っています。

いい意味で“やんちゃ”でいつまでも”悪ガキ”な少年のような性格の彼。
好きな事をひたすら楽しみ、やり続けるゴーイングマイウェイな男、それがMr. Brainwashなんだと僕は思います。

Pics by PUBLICATION
人間なら誰しも歳を取る、夢や希望を抱くことを忘れ、現実的に社会の中で生きていくものです。
しかし一人の男として彼のような少年のようなピュアで冒険心と探究心のある心を、
好きなことをひたすら楽しむ心を忘れたくないと思っていませんか?
男なら誰でもそういう心をずっと持っていたいと思い、憧れるものではないでしょうか?

僕はそう思っています。

僕はかっこいいと思う事を好きな事を追及する探究心、
素直で冒険心がある彼にたいする憧れを
彼のポスターを部屋に飾ることによって忘れないようにしているのかもしれません。

そしてそういう心、初心を忘れるなと自分に言い聞かせているのかもしれません。

単に表面だけを見てカッコいいと思う、それもアートで素晴らしい事ですが、
彼の絵には彼の人間性が滲み出ているような気がします。

ゴーイングマイウェイ、人生を楽しみ我が道を行く人間味溢れるキャラクターが作品にひとくせ加えている気がします。

いつまでも少年のようなピュアな気持ちを忘れていない彼の人間性が、
多くの人に彼の絵が愛されている所以ではないでしょうか?

彼と過ごす時間の中で、僕は多くの事を学び、教えられています。
アートの存在の大きさもその一つ、
悩みがあるとき、いきずまった時、前を向かせてくれたりと多くのことを。

彼に集まってくる多くの人達を見ているとそう感じているのは僕だけではないように思います。
とにかく彼の周りに集まってくる人はみな笑顔でハッピー。

周りの人を楽しませ、時にはさまざまな憶測まで呼び、まさに彼の存在自体がエンターテイメントだと思い、
僕は彼との時間を楽しんでいます。
アートからにじむアーティストの人間性、メッセージ性、それもまたアートを楽しむ一つの魅力ではないでしょうか?

LIFE IS BEATIFUL!!


【PUBLICATION】
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